エスケープキーで 音楽が止まります。

ピンクのボタンの花がさいている 画像です


マリア さんのページ



思い出にもたれかかりつ淡すぎる
雪に消されし足あとを追う


まん中の骨が月へとかしぐ夜は
せっせせっせと手すりを磨く


毛玉なのどこか寂しい体臭の
男の腰にすがった過去は


たま見上げ鬼さんこちら鉢の底
金ちゃん赤いおしりふりふり


ぼくたちは肩を震わせ泣く蝉の
かなかな悲しき詩とは知らず


竹ざおに涼をしならせ夏を告ぐ
風鈴売りの肩の手ぬぐい


路地裏の茜の空に紅を足す
赤きとんぼの朱は切なく


芳ばしきさんまの香り賑やかに
開けっぴろげの戸口をくぐる


残飯を集めて周るリヤカーを
うつむいて押す軸丸くんは


ピン止めを咥え半眼、カーラーを
巻き巻き母は大仏となる


カーラーにネッカチーフのかあちゃんを
姉ちゃんと呼ぶ駄菓子やの前


前髪はどんどん眉を遠ざかり
母の瀬越しの夕日が滲む


鼻水も泥もよだれも悲しみも
全部吸い取るかっぽう着の白


冷やしあめねだる娘におばちゃんは
麦茶に砂糖をこっそりと混ぜ


ラメ入りの腹巻の青涼やかに?
ステテコで舞うおっちゃんの夏


扇風機股に挟んで恍
じいちゃんの歯は卓袱台


あさがおは食えねぇからとじいちゃんは
曲がりきゅうりにつるべ寝取らせ


十三夜夢路の果ての郷愁を
帰れない者たちは紐解く


弄ぶためのネズミを咥えては
タマは私の足に擦り寄る


にゃんこより大好物のボールより
ジョンは列車を追いかけた、夏


シュミーズで路地に水撒くばあちゃんの
おっぱいはまだ誇らしく揺れ


つっかけの足音は路地掃く風と
猫を跨いで二丁目の角


雨音に紛れし夏の始まりは
軒下に聞く蝉の産声


訪ねくはひねもす窓を打つ雨に
しおり戸揺する風も恋しき


もう雨もあたいを止められないのよと
キリリッと赤い長靴が鳴る


あすなろと生きてるだけでいいからと
染色体に書き加えおく


立ちぬるる果てしなく名もなき雨に
色づきし花の盛りもしらで


ぽつぽつとつぶやきもせず紫陽花の
青を揺らして雨だれは落つ


告白は紙飛行機か風船を
あなたの街の青空ポストへ


「イエス」から書き始めよう偶然を
必然とする未来日記を


違えども救われるべき戦場の
イエスの子らのロザリオに雨


イエスタディ・ワンス・モア足あとに
零したものを花が吸うまで


5ccしょっぱい昨日を捨てたから
きっと明日のかかとは軽い


無花果の花果を仰ぎつ
心地よき廃墟となりし曖昧な午後


あまりにも似合いすぎてる真夜中に
すっぱく軋む心をあやす


うす暮れて惑う思いは杏仁の
甘きくちづけ山茶花の候


靴底に引き返せないつま先と
静かに狂うかかとを濡らす


打ちよせる波紋のまなか一輪の
赤き塵埃悲しみもなく


月影を前に後ろに従えて
ゆるゆる野辺の遅き春ゆく


寥々と彼の日を思ふ倒木の
主根をうがち芽ぐむ大地の


検索のあわいの町にレシピなど
いらぬかぼちゃをこんもりと煮る


戻れない空は夕焼け永遠と
つかの間の青海に浮かべて 


チューリップ母さん夜なべで不揃いの
胸に赤白こんもりと春


潔くなんて散らないおめおめと
生きて愛する花はつかの間


行きずりの風はいたずら花摘みし
白きうなじにつかの間の恋


嫌いにはなれない夜に届かない
泡を数える深海の空


目を閉じていい日もあるとお日様が
教えてくれた空はうす桃


買いました自分を好きでいるために
「がんばりました!」の桜のハンコ


触れくるる人のいなくば桜花
微かに背け墨染めの春


忘るまじほのぼの満る五とせを
いずくの空の青の下にも


雨だれにまつ毛をそっと唇で
くるまれた日のリンクを探す


初恋も許されぬ夏無垢抱き
ひめゆり赤く爆弾に咲く


僕だけが雨の匂いに泣くきみの
最大公約数になれる


家並みに見知らぬそぶり垂れ込みて
里にしるべの花も香らじ


澱みたる時間傍らの寂しきに
しばし未熟の月を眺めむ


かた結びほどく春空爪立ちて
厚物干せばかかとの日向


日に乾き接ぎ穂の要らぬ縁側に
君ある限り家は生きたり


遠ざかる君の景色を追いかける
向かい合わせの指定の席に


小春日に春の絆を結わえたら
先駆けましょうあなたの庭へ


昏々と街は轍の一色も
許されず雪目深にかぶり


右左道にこぼれる陽だまりに
けんぱーすればイチゴの窓辺


ラムネ瓶こくんと青くうなずいて
カランと冬の私を占める


眠たげな鈍色の雲揺り起こし
「明けましたよ」と初日が笑ふ


好き、嫌い 毟る花びらふんわりと
少女は塚を太ももに積み


深爪に泣きたい夜は泣きなさい
男だから…をあたしにあずけ


くったくをとくりとくりと飲み干せど
暮れて武骨なぐい呑みの染み


モザイクのドアに凭れて泣いている
ヘブンリーブルーな男はみんな


うべなえぬ暗がりに花まさぐらば
指さき濡らす「ありがとう」の香


しゃがまりて鬼の背中をさすりをり
闇掃く除夜の鐘におじつつ


せっかちな冬の日なたに続けざま
洗濯 布団 父さんを干す


うす闇にすべなく惑う指先を
つたうしずくは撫子の無垢


ふぞろいのサヨナラの中ただ一度
許されているクラクションは


逆光に霞む扉が開くまで
あなたの中の世界で微笑う


泣きながら打たれる頬は泣きながら
打つ手のぬくみ知ってまた泣く


湯けぶりに流せぬ母の丸き背を
月影やわくわれに代わりて


木枯らしにきゅんと泣く頬くるみ込む
ウールマークの手のひらが好き

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ぎゅっぎゅっと握ればぎゅっっと影ふたつ
路地を染めゆく柿色の陽に


磨りへったペダルの先を灯す陽は
すとんと熟れた柿ひとつ連れ


つるべ落つ里の山辺のたそがれに
暮れ残り咲くもみじの赤は


そわそわとそよめく風の告白に
うすく紅たすコスモスの丘


ひとまわり小さき土鍋に四分の
一の白菜もてあまし 秋


「どうして…」と風が鳴いたら「大丈夫
大丈夫だよ」とゆれて 秋桜


消え残る月の不貞の煌めきに
ざわわと揺れる尾花しだらに


残響と君と明日の指きりで
三次元は作られている


やがて降る雪を待てずに指きりの
町はリムジンバスを走らす


きゃっきゃっと蛇のしっぽを掴みたる
乳くさき子の母を知らねば


会いたくてたまらない人ばかりまた、
思い浮かべて鈴虫は泣く


ぶきっちょで四角いきみの言の葉を
ほどいては編む月の灯りに


思い出はいつか素数となり雨の
記憶は海を真水に変える 


秋草はお構いなしに野を冷まし
夏の栞りし時をゆるさじ


思いっ切りショートにしたのさよならと
吹く秋風に乱されぬよう


今はまだ、雨にならない雲でいい
ヘブンリーブルーぼくを呼ぶまで


振り向けばだるまさんがころんでた
里のあわいに秋はありふれ


プルシアンブルーの調べもう一度
愛されてみた二十歳のきみに


ひと息で「愛されなくていいから」と
夕焼けを背に そして、笑った



「こっちだよ おいでおいで」と私から
遠のく空に秋の階段


短冊にしがみつきたる蝉の背を
いたわるごとき風は秋の音


一夜だけ抱きしめていてひた白く
beautiful dreamer きっと咲くから


オブラート二枚重ねて見る夢は
右半分を埋める切なく


飲み込めぬサヨナラの文字ひとつずつ
オブラートに置くもつれた指で


蒼白き絶叫のなか蕭蕭と
避雷針立つ裁かれむとぞ


懐に呑みし小柄はひいやりと
風の来ぬ夜の魂を鎮めり


身よりなき月を誘わば傍らの
光はだらにほろほろとして


裁きをり真っすぐな雨ざくざくと
額ずけどなおうらはらな背を


ちりんちりんきっときっとよまた来てね
夕焼け送る風鈴の赤


朝顔のつるをぐ、ぐいっと引っ張りて
夏は爪立つ庭の隅より


道づれはどろり落ち逝く夕あかね
青春18切符の僕の


鈍色の魂ゆだぬればふくふくと 
問わず語らず浄化の森は 


撃つごとき雨に耐えたる一輪の
青き紫陽花もろでに愛でむ


ぐしょぐしょの空をかきわけ紫陽花の
青き憂いを夕陽はそっと


いざなうはあやかしなれど安らぎの
黄泉の残り香慕う海馬の


まわり道置くどころなきうつし身を
月の真下においてけぼりて


向くがままそろそろ行かむ道なりに
追憶に咲く野の花の原


滅びゆく胸の高みは我をなお
甘やかしをり時を差し置き


身をそぼつ夕空の下、道化師は
生まれそこねし影をあやせり


振り返るふふふっの瞳に会いたくて
三歩うしろを大根かかえ


おっちんじまわないように一粒で
二度は笑えるアーモンドチョコ食む


チンチロリンと古道具屋に売っぱらい
そして、あたいは無敵になった


絶叫はやいややいやと重なりて
われ先に生く樹上の子等の


花掛けにあまりにも藍一色の
朝顔そそとしぼまずにおり


離すまじ果てなき森に迷い子の
蒼き眠りの君が尾の先


群青のその美しき始まりに
命あずけし子らの初夏  


まっさらな雲ばかり追う風遠く
手折りし羽根のひとつとどかず


まっさらなくもばかりおうかぜのひは
きづかれぬようはねひとつおる


サイレンはあかねの空のあんまりに、
それでもぼくはレンズをかざす


変わりなきシュプレヒコール呱呱、赤き
ジェネレーションの時の病みしも


さよならの空は三角わなわなと
欠け逝く月のしずくを溜めて


雨ざらし寄る辺なき野のひた土に
ラムネビン立つがらんと蒼く


はろばろと深き棘を踏みしだく
轍、白日とともに乾けり


ホームラン、シャッターを切る刹那には
過去となる空あきらめきれず


もうすぐの雨の匂いがわかる朝
忘れてもいい夢を数える


くちなしの花を思わばたちまちに
名残りてわれはいよよ匂へり


封印を解いてください散りたくて
桜は春を選ぶのだから


ぬくもりはためらいひとつなき背の
小さきリズム守りたきもの


ニヒリズム熱きかたりべ振る袖に
光るGUCCIの時は空虚に


それぞれのブルートレインまっさらの
夢に向かってひたすらに、春


あこがれの万年筆を買いました
日向の記憶育むために


春だからあなたのお気に召すままに
だってあなたが春なのだから


ハナミズキ一つ二つと三月は
ましろき願ひおぼろにほどく


大嫌い」そう言えるほど僕はまだ
君を知らない菜の花のころ


あるまじきものとなりしか平等の
光幽かにわれは凍えむ


恍惚の花降る里に妻の名を
尋ねあるかむふたたびの朝


デジタルな後ろめたさをアナログに
つじつま合わせハードコアな夜


わすれもの空に透かせばぽろぽろと
さよなら色のミントキャンディー


思い出になりたくなくて引出しの
小さきボタンはあの日の青で


うすうすとゲームオーバー唇に
チェックメイトの一手隠して


僕はもう忘れられない君はまだ
覚えていないパンの焼き方


あるがまま煌けばいい塵ほどの
名もなき星と生まれ消えても


ざけんなとおめおめ点る街の灯を
蹴ちらす雨は今日も眠らず


痛いほど冴え冴えと星またたきて
しじまに流す涙一筋


ひたすらに降る雪の白まったきの
あまりの無垢に立ちそわずらふ


白き夜へ行き着く刹那まん中に
きみの名を呼ぶふうわり笑ひ


限りなしにまなかに寄せて深々と
澪引く波よ我をいずこへ


銀の夜は微笑みのした一粒の
隠れた涙さえも震えて


星色に変えてみたって石は石
ならば今さらケセラセラララ〜♪


離すまじきみがまつ毛に積む淡き
雪のしずくに変わる刹那も


生かされているらしいまだ許されず
試験開始のアラームを聞く


つま先の寂しさにふと目覚めれば
雪見障子のあちらとこちら


あるはずのない明日ばかり書き散らす
横顔が好きちかくて遠い


交わらぬ視線の先の寂しさを
ただ雪明かりだけが静かに


慢性のドライ愛です目薬は
一日一度泣きたいときに


さよならはカッフェ・エ・ラッテのバランスを
壊してしまう だから「サヨナラ…」


ひとひらの紅葉しおりて置き去りの
おどけた文字の透き間を撫ぜる


とりどりのあなたの声をつむいでは
織りあげてます季節のすみで


ここちよいほどにルーズに抱きあえば
たったふたりの秋が始まる


ふたたびのなき道ならば曼珠沙華
ゆるり眺めむ悔恨を背に


何色に染めあげましょう夕焼けが
好きなあなたとつないだ糸は


身代わりて厚き硝子の散々と
云わぬ未練の夜に降りつむ


此の岸のわが逡巡を見透かすや
さまじき月の硝子の微笑は


十六夜に紅さす指の変わらぬを 
すべなき恋の今ぞ虚しき


十五夜に置き去りにした足あとに
まだ「さよなら」は言いたくなくて


ままならぬ秋の気配に爪立ちて
足音待てりなけなしの夜は


約束はひとつでいいの手のなかで
ぎゅっと握れるくらいでいいの


影さそいあなたがほしい夕暮れに
ふたりごっこの花いちもんめ


訪ねくは月影ばかり手鏡に
紅さす指のいとど侘しき


人知れず咲く花しろくただ白く
しろきことにぞ一期尽くせり


ふうわりとほどよい風になりましょう
あなたの空がぐずらないよう


あまたなる命を日日いただきて
生かされおりぬ我と忘れじ


空高くあなたと夏を放り上げ
ミントキャンディーひとつほおばる


十五夜はうすむらさきをぬぎすてて
しまいたくなる あなたのせいよ


目覚むたび「あなたは誰…」と問ふ秋の
鏡に咲きし青きひまわり


秋風はいとけなかりし無花果の
熟れごろさやと口笛にのせ


足あとを「あのね あのね」がトコトコと
追っかけてきてしっぽが生えた  


落っこちた翼はきっとさがすから
それまでちょっと待っててね空


うす曇りくらいでいいの紅い目が
あなたをさがす他愛ない日は


いたわしく湯の寂びたれどおやみなく
わが平坦の今ぞ恋しき


はぐれ雲追いかけていたふるさとの
風がわたしを思い出すまで


ざらざらとわだかまりたるわが日々の
かさぶたを剥ぐ故郷の隅に


つぶやけばため息となりなけなしの
幸こぼれ落つ夏草のうえ


蝉しぐれ朝な夕なに贖罪の
法華経しきりそろそろを知り


舞ふきみの指先のしろ月に映え
胸の深きにたちまちの夏


だからこそひまわりの種おちる日も
やたらに蒼い空ばかり見る


風の歌しじまに聞けば夜はまた
せつなく三度藍を重ねる


くったくに空明けぬれど片隅の
未生の朝に赤きあさがお


遠ざかる祭りばやしをひとり聞く
蒼きあさがお夏にうなだれ


いにしえを風のたぐらば川床に
こんちきちんと悠久の夏


わだかまる指は冷たくエピローグ
綴れないままほの寒い夏


生きているそれは温いということと
父は淡々と冷たくなって


甘い香に母の手わすれ迷い子は
ほお染めながむりんご飴の朱


忘れものさがしつひとり歌うたう
吾亦紅の穂ゆらぎし原に


降り立てば無人の駅に月はなく
蛍光灯のはたはたとして


暮れなずむ空とあなたと私との
すきま縢りて浮浮と蛍は  


白い花一輪のせて網棚は
廻りつづける憐憫の森


プルシアンブルーの風は二番目の 
ボタンをはずし夏がはじまる


けたたましい空もやがては紛れると
履きなれた靴ほどよく磨く


じわじわと夜はにじりて無邪気なる
曖昧ささえ我に許さじ


銀線の奏でたる夜は水無月に
縫いとめられし想いをほどく


せかさるる命尽くさむ一夜とて
きみがうちなる清き流れに


おざなりな夜をあざむく微笑みが 
うまくなるたびルージュをひとつ


雪待ちぬひたに砂漠の真中にて
干からびゆきし言葉見つめつ


ちんちんと曇りガラスな一日は
カレーライスにこだわってみる


にべもなく積もりし闇もほの薄き
三日月は見ゆ空にあらねど


ひまわりは日溜りにいてそれなりに
それらしければそれでいい夏


あちこちにたばしりし嘘ひとつずつ
手なずけながらアルバムに貼る


生臭き息吐く街に棲む影は
赤き月待つ狼のごと


手のひらの砂ほどの時間それさえも
許されぬ夜はよそよそしくて


ほの青くやや晩き夢ようやくに
殺風景な明日に飾る 


ゆなゆなは蝕む甘き爪あとに
水蜜桃は身じろぎもせず 


海の瑠璃まだ痛いからもう少し
しゃがんだままで生きてゆきます


弾きなれし指は幾日もほしいまま
音なきしらべ我に刻みぬ


雨だれがためらうほどの沈黙の
深きあわいに無口なピアノ


口ずさむ雨だれによせ切なさに
無口なピアノ弾く少女は


からっぽの空が泣く日は何もせず
いつでもここに私はいます


とばりもて夜は昏々とまなざしの
行き場ひとつも我に残さじ


フラットなとりとめのない寂しさに
弄ばれる今日は雨です


足音は振り向きもせず遠ざかり
そしていつしか朝だけがまた


耳鳴りが聞こえるほどの静けさに
きみの名前をつめ込んでいく


おぼろ雲いちにーのさんっで蹴とばせば
「今日も白か〜」と空が笑った


私だけ春に残してゆくバスは
ため息一つさくら散らして


由布岳に抱かれし湯場に一人きて
ただひとひらの桜と出会う


うぐいすが一声鳴けば遠い日の
口笛に似てあなたを想う


てのひらにふわりくるまばくすぐりて
春をつたえく桜はそこに


なんとなく好きたぶんそうなんとなく
ずっとあなたが好き桜みたいに


くすくすと笑えるくらい寂しくて
桜の色のリップを塗った


超えられぬ白線はまた薄闇に
ふるさと行きの風を見送る


おかっぱのぱっつん前髪のばします
早緑のうそ気づかれぬよう


はかなしとしるやあまりに一片の
空なきほどにひたに桜は


空はすぐ窓のむこうにあるらしと
まさぐり蝿はじじじっっと泣いた


雨の日のあなたの嘘は好きだった
水色だから許してあげる


そしてまた簡易ベットにうずくまる
つたない嘘にだまされてやる


黙しつつ着かず離れず道しるべ
空なき街も足裏にゆかし


夕冷えに部屋の空気は疲れ果て
後ずさりする夜を残して 


眠らない部屋の空気は疲れ果て
ため息ばかり闇を残してしばらくをあかねの空に恋こがる



君を待ちをり坂の途中に


涙など出やしないのよただ、「これは
空耳かしら…」そんな宣告


真っ白いハンカチーフにくるまれた
木綿の言葉あなたに贈る


ひび割れたビー玉ふたつぽけっとで
「捨てないでね」とカチャカチャ泣いた


清き瀬に思い出つたう涙ごと
かた結びして白線流し


逆さまに流るる時はあらねども
なごり恋しきあかときの月


この空を誰も知らない街がいい
各駅停車過去に凭れて


じゃんけんでグーしかださぬ小さき手の
爪は桃色クレパスの花


春だから伸びたあなたの爪を摘む
新聞2枚陽だまりのなか


ふたかたに光残さば引き別かる
露けく道としらで蛍は


うらうらと錦おりなす梅林に 
花告げ鳥のこづたふばかり


風つてにほがらほがらと朝影は
花のたよりを川辺にとどく


残雪の垂る窓辺にオリーブを
一枝くわえて鳩は動かず


「ごめんね」と「さよなら」だけを話す鳥
あなたの声で夕漁りつつ


ひとめなくすさぶ苫屋に偲ぶ草
そだちにけらしのどけからぬに


夕焼けの終わりはいつも鳩ぽっぽ
手鏡のなか紅さしながら


野ざらしも遅々と気づかぬ老梅に
等しくわれの来る日をなぞる


野良猫のたまる空き地にずたぼろの
メカゴジラきりたんぽぽが飛ぶ


起こさぬようふわりふわりと綿雪は
眠れる街をまあるく抱いた


「二番目に好きやさかい」て言うなんて
ほんまになんていけずなんやろ


君なくば厨の隅にひざ抱え
誰を恋わぶや飴色の酒


うなされる夜毎の夢もアナクロの
すねた背中にこんもりと雪


移りゆく季節を愛でつゆるゆると
おみなのごとく青き実は熟る


冬ごもりふと垣間見し裏庭の
梅の小枝に春は一輪


中くらい幸せだったら日曜は
例えばびっくりドンキーと君


今日もまたはしばみ色のブルースの
うしろに隠れ一日を終える


にべもなき冬のにおいの唇も
ひもじなるわれおろかに追ひぬ


泣き虫の君がくすりと笑ったら
ノーベル賞を僕にください


つま先をギュッと丸めて踏み出せば
そこには空が泣きたいほどに


ちぐはぐな疼きむやみに折り合いを
つけて越えなむこもごもの冬


鳴きしきる雪もゆらがぬ母の手の
百度願ふは命の秩序


にじむ目にわずかにともる残照を
時ぞともなく見送るわれは


冬枯れの杉に宿りし幻や
見しごとあらぬ淡雪の花


枝打ちて然るにあらず北山の
杉はますぐに宿世とあらば


粛々と父を超えたる歳月を
祝わざりとも春はとがめじ


蕩蕩とされば侘しき雪原も
ひしめく星の色をつけばや 


あしざまに踏みつけられし下葉とて
なにかわさらに雨にさらすや


朝陽のゆるに差したるゆるぎなき
地も凍てつかばせめて葉牡丹 


うひ夢は風の華さく隠れ里
積もる雪肌われに熔けいで


懐かしき街覆いたる雲間より
眺む旅鳥のまなこは白く


ゆく年もくる年さへもわかぬまま
うつうつなぞる命の澱み


言にいで人をそしらばみなわなす
もろきよすがぞうつせみの常


気まぐれな夜の忘れし爪あとを
あがなうごとく雪はくちづけ


どれくらい雨に歌えば雨上がり
あの日の虹に出遭えるのだろう


雪暮れの重るとばりにアラベスク
描きぼたんはつららに咲きぬ


雪の路を南天ころろ辿りなば
小さきうさぎの鳴きつつありてや


慈悲ふかき言葉に飢えし聖の夜に
声も奪われ化石となりぬ


しけた香に淫らに浸る欲しいまま 
蜂蜜色のハスキーボイス


朽ちにける吹き溜まりとて分かち合う
罪のありせば煌きたりけり


垂直に降りける重き氷り雨
ひたにかがみつ山茶花は耐ゆ


沈めない月に魅入られピルエット
踊り続ける赤いつま先


「である」など畏れ多くて「であるかも 」
などと濁しつ汽水に生きる


こんこんと絵のなき夢も魅せられし
つくり笑いを雪は知りきや


モノローグ言霊ざわとわれ打ちて
抱かざる日々も色をあたへり


きれぎれの糸を紡げど時さえも
明日に届かじゆかりとあらば


めそめそと気づかざりしを詫びるごと
月なき空を時雨わづらふ


晴るるとてうちに切なき風花は
ひららと我にたそがれを連れ


喧騒の街ははるかにたむろすも
しばし惰眠の師走ほろほろ


引き寄せる細きくびれに溶け合えば
絡みつくままタンゴの夜明け


手のひらにそっと掬わば雪花は
夢にあらねど名残りも見せず


冷えし足ふっくら包む湯たんぽの
ようなあなたの両手に甘ゆ


閉ざされし色なき街に雪折れと
常夜灯のうすれ逝く音


吾がゆくえ空に尋なば雪稜の
雲さしぐみに群がりまがふ


ストロボが焚かれるたびに境目の
ない暗闇に逆さまの罪


こぼれおつ心しりきやちんちんと
涼炉の上のボウフラが啼く


冬たちて置く朝霜につくづくと
思ふは母のだいこのおつけ


隔てたるやるせなき闇あけぬれど
燎火たつきにまよわましやわ


匂いたつ乙女となりき君なれど
寝顔は無垢のなでしこの花


薄れゆくいびつな月は時をもて
さねふれるまじほろろとこぼつ


彩りを拒む少女はマゼンダの
光とどかぬ氷の果実


掘りごたつ向かい合わせの足遊び
そしらぬふりの黒目が笑う


わが敵はうちに巣くいし科ならば
すずろなるままうらぶる立てり


十重二十重ま白き灰のくるめども
うせぬ種火ぞ深緋をとどむ


ひざ枕常のすみかにあらざれど
許されし夜はゆるりとぞ乞ふ


囲炉裏ばた芋を煮込みし吾が妻の
朱に染まりたる白髪に惚るる


晩鐘のむろにうつらふ枯れ葉もて
露けき秋のゆかむとぞしる 


ジャズなんて分からないけどあの人の
好きな時間に抱かれたくて


決める日は未来予想図泣きながら
上目づかいの女はしょっぱい


ひねもすをつれなき人としらばとて
待ちわぶ秋の暮れはたちまち


風の廊くるる夜ごとは耐えぬれど
おなじ月見むきみのありせば


うつつにはあさきえにしとこそすれど
ととせさめざるさよわするまじ


柿染めし庭のかえでのひとひらが
水面揺すらばこひぞ秋づく


花満てどながらうることゆるさるる
べくもあらねばひとひうたた寝 


むらすすきうねりたえなば雲さして
ひとりさやけき月も消えめや 


此の岸の深き葦原分け入れど
雨もけぶりて一期もならぬ


夕まぐれあるままの吾におびし日を
巣にこもりせばとも寝あらまし


篭る夜と朝の狭間にやるせなく
ため息がまた膝を抱える


逆光に折らばかそけき青林檎
かなたの空の燃ゆるを待てず


川霧を風に呑めども晴れやらず 
久にたわめり水底の空


碧落を穂わたとなりて飛びゆくに
いくばくの時さよに捨つらば


くったくなく透けて煌く梨の実を
たまらなき手がもぎ採れば香


張り付きしつくろい笑顔たそがれも
はがれゆくまじひたひた泣きぬ


たえだえに臥する無明の枕辺の  
りんどうそよぎ秋は来にけり


栗かぼちゃほっこり美味く煮えたから
ゆうべのよそ見許してあげる


咳込みて夜半の梢に目覚めれば
翅もげし背に雪の花束


桔梗の夜気のベールに沈きたる
シフォンの花を水際に抱く 


「あほちゃうの?」「あほいうやつがあほやねん」
「せやであほやで好きやねんから」

風わたり庭の草木も秋さびて
萩のしげみを鈴音揺るらし


赤とんぼ澄み渡る空秋桜を
両手に抱えふうわり飛んだ


あきあかね「きっと行ける」とブランコを
裸足で蹴ったコスモスの丘


あまりにも黄色い空ははらはらと
寄り添いながら私に積もる


泣きじゃくり黄色い空ははらはらと
さびしん坊のポッケに積もる


たまゆらのしづけき真夜に我が腕の
たわつきし髪げに梳るまじ


秋たけし山辺の棚を迷い子の
あきずに添いぬ葡萄色の風


蝕の夜に浮かぶふたつのプラチナの
私を満たすふぞろいの月


黙々と落日燃ゆる国おもい
自然に生きて自然に死する


「おやすみ」の後の紫苑の沈黙が
「切りたくない」とすがる秋の夜


混濁の世にカラカラとかざぐるま
背向の風もかんらからから


どこまでもひとりぼっちの秋だから
優しさ色で空を塗ったの


どこまでもひとりぼっちの秋だから
悲しみ色のクレパスが減る


ヘネシーとR&Bがくゆる夜は
琥珀色した女が沁みる


ありふれた九月の雨のしずくさえ
さね忘るまじ君が姿を


野分きだに東雲の道黎明を
ひたともさんと朝陽の燃ゆ


宿無しとすずめつきふし酔ひ泣きを
朽ち葉おほひてたまゆらの苑


空落ちてふたり果てゆく夏の夜は
緋衣草の赤の洪水


三日月の果ての化身か月牙泉
夜気迫り来る淵を瀬と決め


見上げればいつでもそこに手を広げ
「おいで」と空は心配顔で


浮雲に月も縮みてくゆる夜は
あなたがほしい花いちもんめ


秋だからフリマで毛布一枚の
やさしさを売り空を買ったの


かずら花交わす睦言徒ならば
いとどむなしと月も篭りぬ


しょっぱくて毛玉ころころ捨てられぬ
アトムの毛布すっぱい私


時あかずさかしく鳴けどつかの間の
ほの白き腹新月が撫づ


しどけなく寝乱れし髪夜を明けて
半ばの月とながめをぞする


夏ごろも緋色に着替えほおずきは
君がくちびる熟れつ待ちわぶ


紺瑠璃の深きしじまの淵に降り
ただ海神に抱かれてみる


るるとして欠けゆく月はその身もて
浮き寝に惑ふわれをいさめむ


ゆきずりの翼と知れどしがみつく
名もなき月のしずくの下で


月宿る池に浮かびし寝化粧の
いよよ匂へり月下美人は


ぱんぱかに涙の粒を詰め込んだ
ふくれっつらのほおずきを食む


逝くときは電話くださいっせーのせで
一緒に星になりますわたし


こわがりで一人で逝くのびびってて
ばればれなのにまだ微笑むの?


わたしより先に逝くのは許さない
笑顔が好きと言ったのだから


あちらではこちらで夢に見たことを
とりあえずまず名前を呼んで


皮膚呼吸狂おしいほど重ねあう
赤き星降る亜熱帯の夜


ひたむきに繰り出す足のひたすらな
一歩一歩がただまばゆくて


振り払う腕に絡まる片袖の あて
なき恋のえにしも赤く


ピーリングされた仮面の縞馬は
散り混じる花踏みゆかばかりぎぬの 
世は浮き物と月もしじむる


白地に黒か黒地で白か


ローソンのあなたにチンをしてほしい
半解凍の僕を3分


夕暮れにやっと会えたね影法師
離れられないふたりぼっちは


うつせみの終の棲家にあらざれど
小夜寂としてたちそわずらう


母の背に寝顔で逝きし乳飲み子の
生まれ変わりや蝉時雨降る


まばたきのまにまに映るモノクロの
街は知らないたぶん、そう、夢


この空はあの日のままで青すぎて
選ばれし街静かに笑う


胸きゅんと夏よみがえる湧き水に
スカートを摘み素足をさらす


前提にたずねく人のひさしくを
草青々と心もしらで


雨粒が涙の跡をつたう夜は
中島みゆき繰りかえし聴く


さよならはなぜだかいつも寒い夏
心震えて心溶け出す


「お帰り」と祭囃子は同じ音で
夏過ぎ去りし我を迎えり


かたときも離れがたきと残り香の
薄きすずしをいだき語りぬ


荒れ野辺にたずねく人の途絶えども
なほもさやけく昼顔哀し


さみどりの風にのりくる機織りの
しらべのなかを牛車にゆれる


宵闇をゆかば絡まる夕顔の
真白き露にしとどになりぬ


いにしえの空とたがわず夕暮れは
墨に染まれど朝は重ね来


蝉時雨ひたすら長の年月を
しのびし魂の抱かるる声や


ふるさとの窓辺で褪せた麦わらに
「遊びに行こう」とトンボがとまる


望月も簾と見ゆる伏せ屋とて
比翼の鳥のとも寝とあらば


風月さえ頼みがたきに常夏の
花の在り香を如何とぞ知る


望月も簾と見ゆる伏せ屋とて
比翼の鳥のとも寝とあらば


幻灯機俄仕立てのスクリーン
中ではにかむ父の青春


借り宿をはかなむ月のさめざめと
光そそぎし露のこぼれて


飼い犬のワンワンワンと引く綱の
ほどけりゃニャンとかりてきた猫


お日様に笑顔絶やさぬひまわりを
泣いていい夜と抱き寄せる月


あかときの鳥のせかするほの暗き
庭にすげなし衣擦れの音


まさに今いのち果つなむ月もなき
砂漠に空車マークの駱駝


霧雨にヘッドライトも立ち尽くし
わたしを連れ去る空車も来ない


ありふれた花と生まれき里山の
季節の隅につましく咲きぬ


夏の夜の花火のごとく打ちあがり
飛び散る波に白き牙見ゆ


静けさに生きるあなたに会いたくて
あいうえおから手習う四十


虹えがき雲にちょこんと赤い靴
ぶらんこ蹴って少女も飛んだ


鮎跳ねし蒼き長良の子となると
肝のありかを試す欄干


遊れ女の魂清流をもてさらし
科戸の風の吹きくるを待つ


あの夏がチリチリ黒く縮んでる
灰皿の中寄り添いながら


無理やりに口に押し込むへりくつは
無味無臭にて喉も通らず


「あなたそれ矛盾してます」「してますよ」
だって今夜は満月だもの


隈なかに命したたる紅の
襦袢はだけて遊女の笑う


月もなく星も見限る暗闇の
迷路も果てもたとえば君と


一幅の軸と見まごう藍染の
絽の抜き襟に涼風の立つ


振り下ろす右手の先でにたにたと
頬あざけをり我試すごと


夕霧に契れぬ蛍あはれなり
あかときまでの命としらば


初めての恋の行く末重ねをり
線香花火うたかたなれど


頬づえの跡がつくほどこの街に
ひとりきりだと気づいてしまう


風車掲げぴょんぴょん「お父さん 
肩車して」雲に見せるの


慈雨ふくみ産毛の枝にたわわなる
びわ初々し朝光のごと


物憂げな雨色の街ぼんやりと
ながめる午後はアールグレーを


うずたかく積まれた花はなお白く
蜜蜂はしゃぐ踏切に蟻


雨だれをなぞれば心滴りて
つれなき人の面影を抱く


肩たたき受けつ居座る窓際の
話し相手は流れゆく雲


刹那ゆえ時を惜しみて抱けども
君がしじまにちぢに砕けり


星空も二胡の調べの切なさに
憂いに沈み大粒の雨


誕生のその瞬間にのしかかる
宿命背負いカタツムリ這う


おくんちの小屋入り伝うしゃぎり音が
辻駆け巡り心躍らす


もう二度と叶わぬのなら抱きしめて
せめて私が眠りつくまで


ネオン街抜けてうらぶる路地裏の
酒場の隅のとまり木に住む


ちょい悪の親父もたつくアルページォ
フォーク酒場であの日を探す


白絹に筆はしらせば染まりゆく
しゃくやく小きつぼみをつけて


(濡れるよと)肩抱きよせる戯れに
エイトビートを気づかれぬよう


玉梓に若葉のごとき君詠めば
みそひと文字もその身を焦がす


とこしえの雨夜の闇にいざなへど
身のそぼつ間も月許すまじ


にわか雨蛇の目のお迎え来ぬことを
知りつたたずむ下駄箱の前


五月雨のはじける音に振り向けば
緋色の蛇の目後れ毛の君


差しださるるその手大きく甘えをり
ホワイトナイト顔もしらねど


初恋は遠くにありて思うもの
あの日のままであるはずもなく


オルゴール開ければピエロうつむいて
「ごめん」と星の涙こぼれる


君が傷痛み我れ泣きわが傷に
きみ泣くそんな似たもの同志


この場所はいつでも君に空けてると
チャペルの横の席予約済み


ゴミ箱に捨てた思い出掻き集め
ハッピーエンドに書き換えてみる


イントロで涙どしゃぶりパブロフの
犬真っ青の条件反射


潮騒とヤシの葉音のララバイに
時計はずしてゆりかごの中


懐かしき杏の香る細道に
入らば人の葉集ふる茶店


下界へと押し戻さるる一対の
観音開きありて天界


冷め切ったあなたの言葉ラップかけ
一分チンしてもう一度聞く


三十の枝それぞれ支う手のありて
こそぞ繁らむ杏樹の花果


紫陽花の一葉間借りてアオガエル
雨に歌えばタップふみふみ


この街の今日も明日も明後日も
そっと見守り続くめがね橋


飽きるほど二人で聴いた思い出の
スキマスイッチレンタル開始


ニヒルたる箱一杯のぬくもりを
虚構と知れどなお縋りたし


縁日の金魚愛しく名づけども
一夜なぐさめうたかたの如


隙見せて「好き」と言わせるテクニック
憎いあなたは恋の達人


風もなき陽だまりさやか河岸に
皐競いて咲きすさびたる


波音に呼吸重ぬればさやぎたる
魂潮風にのりて彼方へ


作り方聞けど作れぬ母の味
離れてぞ知るぬくもりの意味


轟音と早き流れに立ち向かい
空見据え滝のぼる若鯉


鯉のぼりせがむ息子に「ごめんね」と
たい焼き二匹菜ばしに刺す


朽ち果てて息絶え絶えの老木に
冷水浴びせとどめさすとは


母の膝ひとり占めして作りたる
新聞色の初こいのぼり


白き帆に行方ゆだねてきらきらと
なびく人魚の髪風になる


虫けらの技極めをリ摩天楼
神に背きて天突くオブジェ


バックミラーに君を探せど思い出の
花吹雪舞い景色過ぎ行く


ミクシーを始め出会えたあの人も
あなたも今や掛け替えがなく


雨粒の奏でるしらべ心地よく
眠れる森のモーニングコール


山深く見初められし日待ちわびつ
無垢守りぬく白椿かな


止まり木に羽根休めんと舞い降るも
枝そこになくまぼろしと知る


ずぶぬれで会いに行けども姿なく
声さえ聞けずどしゃぶりの中


土砂降りの雨あと少し掻き消して
声枯れ果てて出なくなるまで


青白き月戯れに告げ口て
燐燃ゆる目に油そそぐか


粉塵も人騒がしく黒ダイヤ
空澄めど今錆び色の街


晩春の寒の戻りに桜木の
みどり竦める勇み足かと


生きているただそれだけでいいのだと
母なる河の母の声聞く


禁断の花園深く入り込めば
蜜の虜か逃げ道もなく


淀みなく流れ続けるガンジスは
あまたの苦渋溶け込めどなお


オレンジのロード描いて沈む陽を
送るあなたのシルエット藍


窓格子呼ばるる数字人間の
尊厳さえも許されぬ罪


もどかしく手当てかなわぬ電話口
せめて届けと念込める声


理不尽と思えし君の叱責は
愛を求めて泣きし乳飲み子


はかなくも生きた証とマツリカは
花拾う子に香ぞ残しをり


月のいい夜もつぼみて福寿草
いつかあなたの朝に咲くため


黄昏のバトン受け取り夕闇が
おぼろ月まで星とかけっこ


一条の眉間に浮ぶ刻印は
見せぬ涙の深き水路か


そのときを如何とぞ知る木蓮は
かちんこ鳴りてはらり散りぬる


忘れられ半ばくさりし思い出を
深く埋める夜ごめんねと添え


「楽勝さ」勢いでそう言いきった
君の左の頬の痙攣


ふるさとが過酷なりとて飛び着たか
されどあこがる砂漠の薔薇よ


唇にそっと指あて内緒だよ
うなずき閉じるくちなしの花


手折られて咲けぬ小さき花たちの
せめて添え木と花見ゆるまで


君触れしこの手見つめつ名を呼べば
忘れえぬ日の花香りたつ


下書きの初めての文引き出せば
朱色インクで母の添削


右側に見えるあなたの横顔は
もう私のじゃない日曜日


決められぬ思いそれならトスをして
裏も表もどちらも私


この坂を登りきれればあの雲を
掴めるそんな気がして翔けた


ポタポタと涙ろ過したフィルターに
残る思い出空き瓶に溜め


野に入ればぜんまい蕨つくしん坊
父逝きてなお山春を呼ぶ


しくしくと雨降り湿気満タンで
特売品の除湿機を買う


裏街のリサイクル店恋という
コーナーあるか問い合わせ中


霞たる目に夜桜は見えねども
ひとひらまぶたくすぐりて逝く


よく見れば実年齢はばれるけど
夜目遠目にはいけてるわたし


もやの中標手探り立ち尽くす
スクランブルの交差点前


あなたへの初めての文幾たびと
書き直せども引出しの奥


腰痛は引越しのためと言ったけど
年のせいかもしれないわたし


酌み交わす友あればこそ散る花も
見事とおぼゆ春雨のあと


子が巣立ち二人ぼっちの食卓で
会話探しの旅路あてなき


散り逝くを愁う涙か盃に
ひとひら注ぎて惜別の宴


声だけは誰より知っている人を
はじめて抱くその日夢みつ


山桜草に舞い降りうらうらと
さくら草へと春をつなぎて


ひとひらになにを託すか沈丁花
庭のあるじの想い届けと


目覚めれば君の香のみぞ添い寝たる
床に頬寄せ春宵を待つ


わが胸に想い残して去りしゆえ
いまだこの身は夜ごと君追い


思い込み激しき君をたしなめん
我もなおまた幻を追う


その姿水面に写しうっとりと
見つめあい落つ水仙の恋


手折られて咲けぬ小さき花たちの
せめて添え木と花見ゆるまで


その声を聞くためだけに生きている
そういう君の声を聞くため


顔よりも性格だよと言いながら
誰に似てると興味しんしん


今ならばギリ間に合うと戻り橋
渡り食らうか毒を皿まで



ブランコをせがむ娘の手を取れば
「楽ちんだぁ」とはしゃぐ坂道


不倫でも浮気でもなくあなたとは
出会う順番間違えただけ


誰の手も誰の目にさえ触れぬよう
おまえを何処か隠せたならば


くだらない蚤のプライド跳ね回り
荷物背負い込む不器用な驢馬


フレンチが好きよといえば牛乳が
切れているから今日はディープね


蓮根に土のつまりて見通せず
泥田足取りまたつんのめる


何もかも基から断てば軽かろに
いつに戻すかリセットの指


酔いたくて酔うことのため飲む酒は
いくら飲んでも何を飲もうと


雨音とコラボしている鼻歌に
割り込む君の靴音が好き


人垣にその手見つけて踏み出せば
第二ボタンのスローモーション


言いたくて言ってほしくて幾度でも
視線絡めど言い出せぬ二字


分かってる何を一番ほしいのか
見ない振りして目をそむけても


この腕を離さないでと泣きながら
後ずさりする迷路あてなし


大切にしたき想いとうらはらに
してはならぬと叫ぶ誰かよ


気がつけばこんな自分が嫌いだと
さだめ恨めどあらがえぬ性


もしもしとあなたの声がスキップで
耳にキスしに来る糸電話


モンゴルの青き香りに身を沈め
星のベールのまたたきを聴く


あてどなく重きからだをもてあまし
足引きずりて彷徨いており


張り詰めし乳を含ませめざめたる
母の決意よ守りたき者


差し出せし指をしっかと握り締め
初めましてとぬくもり伝う


連歌

砂城とは遠目人目二把からねど
見透かす月の光拒む夜


砂上とは遠目人目に把からねど
見透かす月の光突き抜け


脇目なく昇り続くる楼閣に
足休めせし踊り場も無く


天国と地獄を聞くと蘇る
鼓動早打つ徒競走前


砂浜を靴を脱ぎ捨てひた走り
君を捕まえ引き寄せる波


別れてと頼むお前を抱きかかえ
飛ぶと脅すも一階の窓


カーテンに優しく西陽差し込みて
こっそり紅をさす子亜麻色


すべらかし十二単衣は足りぬれど
八重に重ねし春や爛漫


風緩む土手にぼんやり耳を寄せ
春の息吹の草笛を待つ


そのときが来たらきっととぼやきつつ
老いに気づきてひとつため息


エピローグあなたもきっと同じ目に
略奪婚の奏でる戯曲


約束を信じきるほど若くない
だけど最後にまたもう一度


出張と聞いてあの日は寂しくて
いまやにんまりラッキーチャチャチャ


農耕に主を置き足れば分けあいて
狩猟の民と化せば奪わん


開くるたびそこここに聴く人の情
寒の戻りもなんのことなし


開くるたびそこここに聴く人の情
闇に住めども心晴れ晴れ


大向こう「待ってました」と声かけりゃ
「待っていたとはありがてえ」とや


花形になれぬ奴っこの顔赤く
白きどおらん隠し持てども


阿国こそ敷居高らむ伝統に
なりし歌舞伎を憂いこそすれ


四季に飲む黄金の国ジパングを
外におりてぞ美酒たると知る


一夜だけただの男と寒椿
それ以上でもそれ以下もなく


いつの日か勝負のために備えたる
タンスの下着また買い換える


箸たての中に寄り添う妻夫箸
買いて幾年手にも馴染んで


お互いの無事を祈れどすれ違う
夜行列車の複線の旅


星空に祈るてんとう星ひとつ
あと六個だけ分けてください


あの空の虹まで行けばなれるかなぁ
蝶になりたい蛾の独り言


稜線をなぞり猛禽従えて
落つる雲海金色と燃ゆ


ぺんぺんと薺束ねてかんざしを
結ぶ黒髪はゆ萌黄色


見えぬよにこっそり合わす手のひらに
指で伝える愛していると


言葉さえ君専用のロッカーに
全部預けて蝉の抜け殻


草深き一人庵にほろ酔いて
花鳥風月山詠みて寝る


軽き背に風と笑いて翔ぬける
駿馬千里の原を鞍無く


我が胸に不法侵入立てこもり
家賃滞納あなたへの恋


「本当に消去してもいいのか」と
躊躇い傷にすくむ親指


代わりなきその手と認め縋れども
宙を切る空陽炎と消ゆ


仰げばと唄うわが子を春の陽が
スポット当てて送る花道


権力へ反骨掲げ出馬すも
当確聞けば権力の長


白百合の如き君が手君が足
触れし瞬間寒椿咲く


六畳の狭き世界の帝王は
何を拒んで泣いているのか


「恥」という文化作りしトラジディ
追い詰められど声出せぬ国


なめているお前の飴が欲しいなと
どんぐり飴のふくらみにキス


個性をば履き違えたり教育は
ただ自己中の子どもらを生み


飽食と引き換えに日々失くせしは
体温感ず人の行き来よ


奪われた故に手にせし心眼に
写る数多のリアリティー赤

いつからか気付けば底に横たわる
深きスペース埋める術無く


立ち止まり下を向いたらなみだ雨
上を向いたら虹雨上がり


「く」の字見ゆ小さき母の背中には
語りつくせぬ涙縦書き


ひらがなの丸き背中に運ばれし
人の葉に眼も見える思いよ


約束はしてないけれどなんでだろ
何故だかここであなた待ってる


何気なき君が言葉の行間に
闇気づきしは慕う我のみ


背徳の深き茂みに迷い込み
吐息のみこむふすま一枚


心だけせめて心は君のそば 
残していくよ「持って帰って」


留まりて過去に溺れて泣き濡れて
わが身可愛いやねんねんころり


長袖とパンツの季節見送って
仕事全開脱毛クリーム


親となり慈しみ愛で育てたる
子の手てわたすことのできる日


水彩の淡きパステル染みこみし
歌の便りがただ優しくて


深き傷枝に負い世を儚めど
春の風愛で花見ゆるとは


ジェラシーと書いておんなとかなをふる
醜き姿合わせ鏡に


口紅をさして女の顔になり
ペディキュアを塗り時あなた色


蔦のよに絡み縛りし諸々を
鋏磨げども断ち切れぬまま


立ち上がり前切り開き進みしは
己の足ぞ振り向かず行け


もみじ葉に君の手重ね愛おしく
そっと栞に本にはさみて


君の名を呼び捨てにする瞬間を
厚きカーテンのみぞ知りえて


オムツ手に通いし園で母恋し 
甘える術を教わらぬまま


病みゆきて募る思いは故郷へ 
辿り着けども叶わぬからだ


鼻づまり女は何故か色っぽい
「そんなことより心配しろよ」


雛飾り八段占める1Kで
五人囃子と毎夜合コン


新内と夜ごと流れし編み笠が
三味の音に惚れ舞う風の盆


水音とテレビとチンのハーモニー
交響曲U朝の風景


娘より胸打つ包み懐かしき
お気に入り菓子ずっと忘れず


雛飾ることも叶わぬわが身ゆえ
許し請いつつ幸祈る母


しなだれてしだれかかりしうす桃の
花の色香に目眩覚えて


狂おしく抑えきれぬを短冊に
書くも溢れて滲む筆先


泣き砂を踏みしめ浮ぶほほえみも
気づかぬ背中じっと見送る


玄関で「行ってきます」を連呼して
なかなか行かぬ二十五年目


この膝に甘えてみてもいいのかと
ピンポンダッシュを繰り返す猫


眠るとき一人で上る階段を 
つつみし闇に挑む幼子


群れ中に身の置き場なきはぐれ雲
いわし雲から少し離れて


隠したる悲鳴気づくは君のみぞ
癒し癒され愛し愛され


打ち付ける雨に脅えし窓ガラス 
月も震えて姿隠して


紫陽花の花占いに恋託し
好き嫌い好きかなり長引く


その首が肩のラインが好きですと
上目づかいのラブキャミソール


味噌っ歯と味噌っかす足し二で割った
三十路女の恋はドレミソ


灯りなどいらぬ目病みし我なれど
毎夜定時に探すスイッチ


屋根つたい飄々と街見下ろして
渋滞笑うさすらいの猫


ネオン落ち街白々と午前五時
タバコくわえてゴミあさる野良


暖かい寝床知らない捨て猫の
最後の砦床下の愛


屋根伝い飄々と下見下ろして
渋滞笑うさすらいの猫


ボルドーの風に誘われプロバンス 
いつか必ずきっとあなたと


後ろから抱きすくめられその腕に
自由奪われ心うずめて


頬緩みそっと心に染み渡る
湯飲み茶碗のぬくもりの歌


導かれ必然的な偶然の
唯一無二の君に逢えた日


秘めやかに路地裏こっそり恋椿 
人知れず咲き人知れず散る


幸あれと祈り心に鍵かけて
放物線の行方見送る


うつむいて上目づかいにあなた見て
恥らう姿もう似合わない


まだ逢えぬまだ見ぬあなた今何処 
いつまで待てばいつまで咲けば


宿帳に並ぶ名前が恥じらいて 
ちょっと離れてそっと寄り添い


海に逢い瑠璃の香りに手を引かれ
風髪を撫でさざ波にキス


ビードロの音に腕引かれ迷い込む
異国の風に蝶乱れ舞う


蛍火を蚊帳に描きて天の川 
姫と彦との逢瀬見届け


摘み取られうつむいて泣くミニトマト
口に運べばほんのりと赤


この路地の奥に花屋があるはずよ
なぜ懐かしい初めての街


ただひとつ現世残せし我が跡は
命与えしマスターピース


電話口無言で切って君を待つ 
けんか遊びの恋愛ごっこ


出てきてよ夢枕でもいいからさ 
約束したよ連れに来るって


泣きウサギ初雪まとう安曇野に 
白き足跡翼探して


もう二度と会わぬと告げし君浮かべ
夜ごと増えゆく壁の爪あと


テープからこぼれる君のかぐや姫 
アルページオもノイズもあの日


眼を病みし君が手を取り歩く街 
肌で感じつ歩幅合わせん



菜の花とペアルックなのおぼろ月

妬いて飛び立つ紋白蝶蝶





ランタンの光きしめく長崎に 

遠慮したのか縮む月光





なんだ坂こんな坂など言いながら

D51シュポポ明日を追いかけ





偽りは人の為にと書きしゆえ 

あなたのために渾身の嘘





諦めて宥め宥めて彷徨えば
とんびぴーひょろ空もらい泣き


新雪に隠しおおせる罪ならば 
根雪となりて永久に守らん


人も芽も小さき穴の虫たちも
お手てつないで春いちもんめ


腕組めば照れる可愛い父の顔 
彼女と聞かれ目が縦になる


忍ぶ恋骨董市で掘り出して 
毎夜味わう艶やかな肌


さよならの手紙手折りて飛行機を
作り空へと返す日曜


去年まで翌日だった筋肉痛
なんで勝手に翌々日に


残ってるショーとホープに火をつけて 
まねてくゆらせ咳込んで泣く


葉桜になりてようやく人目なく 
今宵からまたきこゆ水の音


ふかふかのレンゲ畑に抱っこされ
花飾り編む少女桃色


受話器から秋に私を捨てた声
「後悔してる」「もう遅いから」


後れ毛を撫でるその手に嫉妬して
せめてあなたの指になりたい


打ち水がくれし涼風湯上りの
浴衣姿のたもと駆け抜け


シャルウィーとステップ軽く羽根のよに 
ワルツ夢見る壁のあだ花


乳白の湯より覗きし白鷺の
如きうなじに心奪ばわる


着歌もベルも届かぬ雑踏も
君の声だけ受信三本


好きな空好きな街まで風誘い
綿毛ふわふわたんぽぽの恋


眠るならこの地と決めし雪国の
駅に降り立ちわが手取る君


透き通り琥珀色したコンソメに
「ねぇ具はないの」とわざとおどける


雨しのぎ行きつ戻りつ寄り添いて
番う鴛鴦むつまじきかな


あるがままゼロに戻りて生きる道
外に求めず今懸命に


幸福の駅行き切符お守りに
買いて幾年恋も色あせ


箱庭の池に映りし新月を
ひとり占めして晩酌の友


綿いれの目に縫いこめし母親の 
香に包まれて寒さわするる


手袋を忘れし子の手握り締め
そっとそのままポケットの中


背伸びしも毅然と咲きし寒椿
命尽くして散り果てるとも


風去りて天女忘れし薄衣 
生まれ変わりてかげろうとなる


目と鼻が春の訪れ告げに来る 
「もういいかーい」「春だけいいよー」


凛凛と伝う涙をなぞる指
声なく泣きしいじらしき君


香を焚きせんなき思い抱きしめて
幻 追いし独り寝の部屋


木枯らしに子を当てまじと先に行く
今は娘が我が前に立つ


目覚めれど陶磁器色の曇り空
夜明け求めど闇開けぬ朝


もう一度ねぇもう一度抱きしめて
この音楽が終わる朝まで


叫びたき声を幾度も飲み込みて 
言葉忘れし嘘つきウサギ


口紅をぬぐうあなたの唇に
からだ緩みてつぼみほころぶ


両切りのピースくわえた横顔に
惚れていたよと写真つっつく


急流に敢て身を置き流るまま
目指す大海安住の原


この空の下であなたが笑ってる
それが私の生きている意味


澤音に芽ざめせかされふきのとう 
薄め開けまだ寝ぼけ眼で


雪解けの澤に宿りしふきのとう
雪割りて咲く春の訪れ


泣き濡れてまぶた覆いし薄氷 
冬のまにまに光求めて


粉々に散らばって泣くクリスタル
拾い集めて返す冬空


君病めば白湯さえ口に運びしも
わが病みし日は粥もこの手で


何もかも凍らす言葉突き刺さり
眠り奪われ酒に甘える


この視野に入りしものは好きなもの
いつから見えぬそばに住む月


頬打たれ始めて知ったあの海で
君が笑顔で泣いていた訳


レモネード麦藁帽子ワンピース
エーゲ海夢隣にあなた


舵とりし君に寄り添い浮く船は
川の流れに身をゆだね行く


おかしいなこの声聞くと眠くなる
呪文かけたの? 恋の魔法の


癒しえぬ傷背負いしも長崎は
人も木立も風さえ優し


歌なかに何故か聞こゆる彼の人の
同じ血潮の流れゆく音


手の中の湯浴み終えたる乳飲み子の
真珠の如き ほっぺつんつん


なかなかに会えぬ最後の恋だけど
ここにいるからきっと見つけて


恋をして歌詠み手また恋をして
恋のためにか歌のためにか


ヨーイドン川原の土手をかけっこで
ゴールはうちね今日カレーだよ


ロッキーのパノラマ迫りし塔に立ち 
砂粒ほどの小さきを知る


機織てつむぎだしたる言の葉で
何を語らん心そのまま


舞い落ちる雪華ひらリ我が頬に
唇当てて笑みて消えゆく


潔し短き命鮮やかに
咲きて開きて見事散り逝く


逢えし日が別れし日とは悟りしも
 あなたの元へ落ち葉ひとひら


一人っ子階下に響く喧嘩声
耳を塞ぎて過ぎ去るを待つ


人中に君いたれども傍らに
添い寝感じつ寂しさもなく


手作りと聞かれて「うん」と笑みを添え
こっそり隠すクノールスープ


パーティーの笑顔賑わうテーブルの
下でこっそり恋人つなぎ


気がつけば変な口癖染みこんで 
あなた色した物まね上手


ひとりよりふたりのほうが寂しいよ 
あなた 私を忘れてるもの


寝返りをうったあなたの横顔に
そっとビンタを打つまねをする


この花の名前覚えていてほしい
冬になってもあなた一人に


あなた右私は左「あっ違う」
私も右ね目もつぶらなきゃ


見送りしバスの窓打つ雨しずく
案じし母の涙隠して


初夢にあなた見たいと二度寝して
なんで見れぬと怒って不貞寝


花暦めくる指先ときめくも
うたかたなれば心たゆたう


人生ははかなきものと思い知り
せめて一輪もうひと夜だけ


己よりわが身気遣い悩みたる
君いればこそ救われし日々


雨戸明け小春日和の柔らかき
朱色の光降り注ぐ朝


杖を手に登る坂道石畳
響く音色に馳せる思い出


みぞれ雨足元取られしぬかるみに
ままよと遊び 止むときを待つ


月待ちて二人たたずむ薄野に
月より先に触れし君の手


一玉のそばを二人で分け合いて
笑顔二倍の年越しの鐘


星まといお洒落しているもみの木は
行き交う人の心 てらさん


雪つりの木々に守られ隠れ里
漏れる明かりにはやる足取り


彼の岸に咲きし花にて待つという
君を偲びつその時を待つ


逝くときは聞こえぬ声で君の名を
戯れ言なれど熱きもの湧く


月待ちて独り波立つ薄野に
思い巡らせたたずみし夜


会いたくてただ会いたくて切なくて
今会いたくて瞳とじらん


たおやかに立ち振る舞いし君なれど
我が前のみぞ素顔そのまま


まどろみて声も寝言も幼子の
きみ 抱きしめしいとし長き夜


隠しても隠しても尚 溢れいず
想い見通す君がまなざし






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